Webコンサルティング会社
中心設計株式会社 代表取締役社長
日本マーケティング学会 会員
東証一部上場の専門商社にて営業を経験した後、
独立しWeb制作とシステム開発の会社を創業。
その後2008年に再度独立し、
大手メーカーのグループ全社Webコンサルティングや、グローバル企業のWeb改善プロジェクト、中堅・中小企業のWebコンサルティング等に従事し、2011年当社法人化。
最近運動不足でお腹周りが気になっています。
初版公開 2019.02.04
弊社では近年で最も多いのが専門商社の支援です。特に輸入商社の支援を多く行なっています。
商社というと、中間商流としての卸の役割もありますが、本稿で言及するのは海外メーカーの日本代理店としてユーザ企業と直接取引するタイプの商社です。
海外を見ると、日本には無い魅力的な技術や製品が多く存在しています。
それら海外製品を日本で販売しサポートをする専門商社の集客やWebマーケティングについて言及します。
商権の新陳代謝により、多様なフェーズの製品が入り交じる
私は元々専門商社の営業出身です。
専門商社には、成功も失敗も飲み込みながら、チャレンジを続ける文化があるように感じています。
歴史ある企業が多いにも関わらず、果敢なチャレンジを行ない、大きなヒットを造りに行くスタイルに、商売の本質的な面白さを感じます。
私の夢の一つに、いつか専門商社をやる(会社をつくる、商社事業を営む)ことがあります。
人の労働ではなくモノ自体が価値を産むというのは、自分自身が商品主体として生きてきた半生における憧れでもあるからです。
さて、そのようにチャレンジする文化が生まれるのは、構造的な理由があると考えています。
これはメーカーではない商社である強みでもありますが、取り組んでみてダメなら次へという決断に対する金銭的ハードルが低めです。
結果、新しい商権の発掘と獲得は積極的に行なわれます。
そのような事業のサイクルが日々行なわれている専門商社では、成功して根付いた商権が一定のシェアを獲得し定番となり、芽が出ない商権は取引が終了し、そして新たな商権にチャレンジしていくことになります。
それを重ねることで、社内には「歴史ある強い稼ぎ頭」と、「新しいチャレンジ」が織物のように入り交じります。Webをどう活かすか考える際に、この視点は重要です。
この「やってみよう」&「やりきろう」&「ダメなら撤退」というサイクルを回していくスタイルは、Webによるテストマーケティングと相性が良いのです。
稼ぎ頭商権のWebマーケティング
稼ぎ頭の商権ということは、既に売れているということです。
営業は売り方を知っていて、売れる理由を知っています。
ある程度の期間その商権に取り組んでおり、過去の蓄積から、顧客側の情報から、製品の詳細な情報まで熟知しています。
であれば、まず考えることはその稼ぎ頭の事業をさらに伸ばせないか?ということです。
エース営業ヒアリングを通して、売れる理由と営業のニーズを整理し、Webに実装します。
ニッチで既に業界に浸透しており、もう開拓の余地はないということであれば、特に力を入れる必要は無いでしょう。
ただし、新たなニーズが発生した場合には検知する必要があります。
そのための仕組みができているか?という点をチェックして対策をしておくと、勝てる事業での取り漏らし予防がローコストにできると思います。
今勢いがある商権のWebマーケティング
社会的・業界的なニーズとも合致しており、今勢いがある商権。
大抵の場合完全なオンリーワンはあまりなく、少しは競合が居るものです。
また、売れていると誰かが類似品を持ち込むこともよくあります。
競合対策し参入障壁を築くことで盤石なものとしたい場合にも、Webの活用は有効です。
このケースでも、営業は売り方や売れている理由を知っています。
ただし、まだまだ試していないパターンも多くあり、開拓の余地はあると感じているかもしれません。
それを加味して、売れている現象を再現し、「もっと」を創り出す取り組みをします。
伸び悩み商権
一部には売れているが拡がらない、または全く売れていないという商権。
もっと売れても良いはず(=ポテンシャルはあるが伸び悩んでいる)という場合と、現実的に今が限界というケースがあります。
売り方を変えてみる、売り先を変えてみる、売り場を変えてみる。そんなテストマーケティングを行い、検証してダメなら消去法的にチェックしていく方法をお勧めします。
伸びしろが大きく億単位で売れるヒット商品になることもあれば、ニーズが無いことを確認できる場合も両方経験しています。
大切なのは「可能性を一巡させてみて、困難だと判断したら一旦諦めて冷静になること」。
売れない場合、売れない理由があります。
どうしても売れないもの、商談すら生まれないものは、なぜ買わないのかを別口でターゲットユーザにアプローチできる場を設け、ヒアリングしてみましょう。参考になるはずです。
衰退商権
以前は売れていたが、現在は環境が変わり衰退している商権です。
既存ユーザの更新程度で、新規で入ることは滅多に無い、事業ライフサイクルの後半以降にある製品は、根本的になぜ新規で入らなくなっているのかを考えます(大抵お客様は理解されています)。
その上で、可能性がある入り方はあるかを検討し、余地があればテストマーケティングを行い、余地がなければコストを掛けず静かに終息させて行くのが良いでしょう。
ただし、その製品が売れなくなったとしても、その分野に関する知見や情報は豊富に持っているはずです。
であれば、その知見を生かして別の新商権を持ち込むこともできるはずです。
商社の財産は、売れている商権もそうですが、営業の知見と業界の既存顧客リストであることは言うまでもありません。
しかし、既存顧客リストや既存リードについて、他商権のマーケティング・営業に十分に活かせているという実感はありますでしょうか?
もしそれら資産が社内で分断している、有効活用ができていないなら、中期経営計画で打ち立てた営業計画達成のチャンスかもしれません。それはすなわち伸びしろだからです。
新規商権
新規商権のポイントとして、担当する営業パーソンですら明確に売り方・売れ方を把握しておらず、仮説レベルの場合が多いことがあげられます。
基本的に商権獲得の際には、日本市場での市場性をリサーチし検討した上で取り扱いを決めていると思います。しかし、究極的には「やってみなければわからない」のがビジネスです。
メーカー本国やグローバルでの成功パターンも共有されますが、日本市場で機能しないケースも散見されます。市場環境が違う、法規制が違う、基準が違う、ビジネスのルールが違う。
また、取り扱いを始めて初期の頃は、まだわからないことも多いです。
メーカーからマーケティングのために追加情報を要請しても、返答が得られないこともざらです。
理解度も情報も限られている中で、製品に対する理解を深めてマーケティングし、営業しなければなりません。
しかも材料となるメーカー支給のコンテンツは大抵抽象的で、言っていることは「最高の」「素晴らしい」等の自画自賛が多く、日本文化にそぐわないものが多いです。弊社の社員は皆、原文を翻訳し、それらの修飾語を削った後に何も残らなかったときの哀しみを知っています。
そんな風にわからないことだらけで、メーカー支給の情報も頼りにできず、かつ内容が専門的では、コンテンツを創り出すことの難易度は高いと言えます。
そもそもなぜその機能が必要なのか、そのスペックは顧客にとってどのような意味を持つのか、顧客はどのような課題を抱えていて、不都合があり、これはどう解決するのか。顕在化しているニーズは何で、潜在ニーズのうち何が響くのかも、初期段階では明確にわかりません。
そこでユーザを知り、学び、製品を学び、業界を学び、分野を学ぶ必要があります。
リサーチを行ない、仮説の精度を高めながらもクイックにWebで検証し、芽があればそれを伸ばし、芽が出なければなぜうまくいかないかを考え、見込み客との商談の状況を聞きながら次の打ち手を考え、未知の世界を切り拓いていきます。
まとめ
専門商社(輸入商社)のWebマーケティングとしてまず重要なのは、何を注力対象にするかということです。
ポイントは、各商権(各製品)はライフサイクルとして今どこにあるかという視点と、そのライフサイクルのフェーズ毎に行なうべき判断軸が異なるということでした。
自社内において、どの製品に可能性があるのか、取り組む価値がありそうか、悩んだ場合はご相談ください。
無料相談会をご用意しています。
余談ですが、私が過去取り組んだ中で最も難解な分野では、1つの商権の理解に300時間要しました。気付けば合格率5%の理系国家資格の問題集を理解できるようになっていました。
現在では、分野基礎学習を、産業界マーケティングの知見を持つ社員に任せることで、大分楽ができるようになりました。
この記事の執筆者
東証一部上場の専門商社にて営業職に就き、ルート営業、新規開拓営業、展示会営業等を経験した後、Web制作とWebシステム開発の会社を創業。その後2008年に再度独立し、大手メーカーのグループ全社Webコンサルティングや、グローバル企業のWeb改善プロジェクト、中堅・中小企業のWebコンサルティング等に従事し、2011年に当社法人化。代表コンサルタントとして現在も前線で業務に従事しながら、経営・社員のマネジメント・育成・事業開発に勤しんでいます。コロナ禍でお腹周りが10cm増えました。