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Web戦略とは何なのか

著者:コンサルタント 上田

Webコンサルティング会社
中心設計株式会社 代表取締役社長
日本マーケティング学会 会員

東証一部上場の専門商社にて営業を経験した後、
独立しWeb制作とシステム開発の会社を創業。

その後2008年に再度独立し、
大手メーカーのグループ全社Webコンサルティングや、グローバル企業のWeb改善プロジェクト、中堅・中小企業のWebコンサルティング等に従事し、2011年当社法人化。

最近運動不足でお腹周りが気になっています。

初版公開 2024.09.13
WebコンサルティングWebマーケティング

戦略とは、”戦いを略す”と書きます。

経営戦略は経営層から生まれ、具体的な戦術にブレイクダウンされて実行されます。

経営戦略は会社がどちらに向かうかという方向性であり、無数に存在する選択肢のうち「自社は何を選び・何を選ばないか」という大局的な判断を明確化したものと言えます。

では、Web戦略とは何を指し、何をどう考えれば良いのでしょう?

日々、上場企業・中堅・中小企業全体、部門単位、製品単位、または省庁全体など、Web戦略の立案と実行を支援している立場として考察します。

そもそも戦略とは何か、無ければどうなるのか

戦略を考えるということは、これから先無駄に生じる問題を略すためのお膳立てをするということです。

「こうしたらこういう問題が起こる」「こうしたらこういうマイナス影響がある」というのは、考えれば予め予測できることもあります。事前に考えて回避策を用意しておいたり、またはより効率的・現実的に有効なアプローチを考えたりしておけば、無駄な戦いを略すことができます。

それを考えずに意味の無い方向に突き進んでいたり、何かを実行する際、別のどこかに大きな負荷や無理が生じていたり、コストと成果が合わなかったり、実行した結果反作用が生じて苦境に陥ったりします。

戦略が無いということは、行き当たりばったりである、ということを意味します。

具体的なアクションを起こす際には依拠する方向性がないため、その都度ゼロベースで考えることになります。考える際の判断軸も、担当する個々人やその時々でバラバラです。

そのため、部門間で協調して人と人が連携して動くことが難しくなります。
お互いに「自分の仕事」がある中で、縦割りの部署をはみ出して力を併せるということは、お題目が無く、目線が不揃いであれば難しくなります。

Web戦略とは

Web戦略とは、戦略的なWeb活用の方向性とも言い換えられます。
事業上の課題やチャンスに対し、何のために、どのようにどう活かし、それはどう在ることで戦いを略し目的達成に寄与できるかを立案します。

その方向性に基づき、具体的に落とし込んだ方策が戦術であり、手立てです。

Web戦略の例

例えば経営戦略が「高付加価値・高品質・高単価」であり、現状はターゲットのトップ層の一部にしか浸透していない場合、かつ営業でダイレクトに食い込むのが困難な場合。シンプルな例で解説します。

Web戦略としては残りの限られたトップ層とそれなりの数がある中堅層をターゲットに、Webでリード獲得、既存リードの育成と営業支援を行なうような路線が検討できます。

またその際に、低価格帯の顧客層はどうするのか、初回取引後にボリュームの増加や本丸である高付加価値・高単価のビジネスに繋がるのか、または繋がる可能性がある顧客層はあるのか、そこを狙っていくことはできるのか等総合的に検討し、取り組みに掛けるパワー・優先度を調整します。

具体的な方策・戦術の例としては、対象ターゲット上位企業の経営イシューに狙って響かせる情報発信・広報媒体の活用や、既存Web資産・コンテンツの棚卸しを行ない、Web戦略で狙うターゲットとのタッチポイントを産むための材料は足りているのか確認し、不足があれば補い、ターゲット目線で今のWebサイトが「弱い」のであれば強化などに落とし込まれます。

そのようにWeb戦略とは、Webで何をテーマとしてどんな方向性で取り組むべきかを策定し、優先度付けするものです。全て取り組むことができれば理想ですが、リソースは限られています。限られたリソースを有効活用するためにも戦略を考えることは不可欠です。

また、上述のとおり「大枠で何をするか」という話だけでは抽象的で、実行に落とせません。そして実行の際の現実味もブレイクダウンしてみなければ不明という状況に陥ります。

そのためWeb戦略を立案する際は、常に抽象度を上げ下げして具体と抽象を行き来しながら、実行可能な戦略に落とし込み、Web戦略が策定できた時点で既に大枠の戦術レベルが概ね見えている状態にすることが理想です。

Web戦略の粒度と範囲

Webは単独で存在している訳ではなく、必ず人や部署部門が関係し、相互に影響を与えます。

そのため、Web戦略の中身・カバーする範囲は、Web戦略を立案し実行を牽引する主体がどの部署かによって全く異なります。企業全体に比べ、部署単位や製品単位などになるにつれ、Web戦略は「具体」色が強いものになります。

  • 企業内の役員会レベルのWeb戦略
  • 部門単独のWeb戦略
  • 特定製品担当レベルのWeb戦略
  • 補足として大企業の全社Web戦略
  • おまけとして非企業のWeb戦略

等々。それぞれ解説していきます。

企業内の役員会レベルのWeb戦略

企業の中期経営計画・目標・ビジョンの達成のため、経営戦略が立案されます。

このレイヤーで考えるWeb戦略として立案されることは、基本的に全て経営戦略及び重要な経営イシューとリンクしている必要があります。そのため、企業及び置かれている環境に対する確かな理解が必要です。

それが無く「Webしか見ていない」Web戦略は、歴戦の経営陣から一蹴されることでしょう。

企業全体のWeb戦略の構造
企業全体のWeb戦略の構造

基本は中長期的なミッション・ビジョン・中期経営計画に基づきます。
(もし直近の短期経営計画に寄与できるものがあれば加味します。)

経営計画、目標、ビジョン。実現の妨げとなるイシューに向き合いリンクする。

このレイヤーでは、Web戦略として考えるテーマは1社1社毎に本当に様々です。

たとえば経営目標達成のための眼前の課題はどう解決するのか。

技術なのか製品なのか営業なのかマーケティングなのかオペレーションなのかマネジメントなのか、外部の協力者が必要なのか、社内を連携させ巻き込んで事を為すのか、人材採用が必要なのか。

経営層が立てる道筋の実現に際し、Webやデジタルをどう活かして実現可能性を高めていくのか、という軸でWebの有効な活かし方を検討・整理・議論し、合意形成を図りながら役員会の承認を得て立案します。

それは机上の空論ではなく、関係各所から直接生の声としてヒアリングを行い、可能な限りデータで「現実に何が起こっているのか」を把握することで、血の通ったものとなります。

最終的にそれは実行段階で部門を越えて巻き込んでいく錦の御旗となり、組織内の協力を得られやすくなるでしょう。

実行可能な戦略にするには、できるだけ早い段階から組み込む

その戦略立案の際、トップマネジメントがWeb・デジタルに関して造詣が深い場合を除き、実行可能な戦略となるよう、またWebやデジタルという方策を早い段階から経営戦略に組み込んで有効に活用できる道筋を立てられるよう、Webに知見のある担当役員様が関与し組み込んでいくことが理想です。

また、Web単独ではできることはたかがしれています。
例えばマーケティングであれば非Webの広告・広報とも関係しますし、営業部門の協力がなければ回りません。
採用であれば採用担当部門との連携は必須です。

経営層の意志を伝える媒介となり、協力して「Webサイト用意、その後」を共に走ることができる関係をつくりましょう。

弊社のようなWebコンサルティング会社に企業全体のWeb戦略からご相談いただくシーンには2パターンあります。

ひとつは、リニューアルや新規立ち上げなどのシーンで、シンプルにWebに対する知見に乏しいためプロジェクトをリードして欲しい場合。
もうひとつは、そもそも検討する必要があることが山積であり、複雑で入り組んでおり何を軸として全体最適が為せるのか、そのビジョンを描くことが困難である場合です。

それぞれに最適なサービスパターンの類型をご用意しております。

シンプルにWebに対する知見に乏しいためプロジェクトをリードして欲しい場合

状況が非常に複雑であり、グランドデザイン・ビジョンが描けない場合

部門単独のWeb戦略

例えば営業部単位、単一事業/製品単位、または採用担当部門、IR担当部門など。

その単一の部門毎に予算があり、または稟議・予算取りを行ないWeb活用に取り組むのであれば、部門単位のWeb戦略が必要になります。

このレイヤーでは、特定の目的に特化したWeb戦略を立案することになります。

部門単独のWeb戦略の構造
部門単独のWeb戦略の構造

部門単位の場合、基本的に眼前の目標で日々駆動していると思います。遠すぎる話をしても「そんなことより目の前の数字を今上げるためにはどうしたら良いのか」となるでしょう。そのため、基本は今課せられている部門毎の役割をいかに達成するものとするかを基軸に考えます。

「戦略」は、一般に中長期的な視座に基づくものと言われますが、一方で”戦いを略す”と書くものです。今目の前の無駄な戦いを略し、勝ち筋が見込める方に絞り込むことも立派な戦略であると思います。

ただし、部門長クラスになると、中長期視座でも同時に考えられています。中長期の計画やビジョンを軸に、経営層が考える方向性と整合性を取れるようにしていきます。

Webで何を達成するか、目的は? 改めて問う。

たとえば、Webからの顧客獲得・営業支援が目的であれば、市場環境・ターゲットユーザが置かれている背景、競合状況、自社の状況を把握分析し、部門の目標に対して何をどうWebで取り組んでいくか、数値データに基づきWeb活用での伸び代はあるか等を検討し、Web活用の目的設定に落とし込みます。

集客に関して検討する際には、獲得したリードをどう顧客化するか、既存顧客はどうフォローしていき受注を上げていくかの絵図を描き、その現実味を顧客と接している営業担当とすり合わせていきます。

そうやって営業サイドからの顕在ニーズに加え、Web観点からのリサーチ・分析に基づくチャンスの有意性を検証・検討し、新しい営業戦略に落とし込みます。

つまり、この場合のWeb戦略は、「営業戦略に戦略的Web活用を組み込んだもの」とほぼ同義になります。
むしろ、営業戦略と連動していないWeb戦略は的外れで意味が無いものになりがちです。

もしWebを主幹する部門と営業部門が別個に分かれていたとしても、必ず営業部門を巻き込んでニーズをしっかり把握することが原則です。なぜなら、リードを創出しても「欲しい」リードでなかった場合。商談にうまく繋げる方法がわからなかったりすれば、不満が噴出し噛み合わなくなるからです。

Webサイトに「何の仕事をさせるか」を詰めておく

現代のWebマーケティング・デジタルマーケティングではできることが格段に増えました。
マーケティングオートメーション(MA)ツールを使えば、浅いリードを蓄積しておき、暖まったタイミングで刈り取りに以降する方策を取ることができます。

既存顧客の行動を把握し、足繁く通わなくても追加/新規案件の発生を検知する使い方も可能です。
デジタルマーケティングが営業のプロセスを代行し、分業体制にして効率を上げることも可能です。

営業活動における課題を把握した上で、どんなWeb・デジタルの使い方ができる可能性があるのかを伝え、その上で実際に取り組みたい使い方は何か、優先度はどうかをすり合わせる必要があるでしょう。

後は、専用サイトを立ち上げてSEOで伸ばして行くのか、広告と受けページを用意して刈り取り施策メインで行くのか、外部メディア・プラットフォームを活用してそこでの認知拡大やリード獲得を狙うのか、といったWebによる戦術論で詳細を詰めていきます。

特に、ニッチなビジネスの場合、目的を新規開拓のみに置くと、1サイトの中で新規リードを獲得できるものとできないものが生まれます。

「Webサイトが仕事をしました」その後段の扱いを詰めておく

昔のWeb集客はシンプルでした。ターゲットユーザを集めて、お問い合わせに誘導する。
営業はそれを受け取り架電し、アポを取り、商談を進めて受注する。

今では様々なリード獲得ポイントがあり、お問い合わせ、カタログ請求、ホワイトペーパー・お役立ち資料ダウンロードなどの様々なコンテンツ、ウェビナー、無料会員登録など。

それぞれ、どう営業プロセスに組み込んでいくかを予め詰めておく必要があります。

どんなときに誰がどんな対応をするのか、どうアポを取るのか、その後の商談はどう展開するのか。
コンバージョンの種類毎にアポ取りから商談・受注までのプロセスをどう磨き上げていくか、どう記録を付けて改善していくのか。

そこまで踏み込んで支援していかなければ、個々人でバラつきが生じ、有効な使い方を磨いていくことができません。その後段も含めて実現性がある戦略にする必要があります。

特定製品担当レベルのWeb戦略

特定製品単体に対するWeb活用の場合は、新規顧客の開拓を主目的とされるケースがほとんどと思います。

「この製品はWebでの顧客開拓と相性が良いから、Webでマーケティングを試してみたい」
「この製品は力を入れて取り組みたい」

目的や目標によって、取り得る戦略は異なります。

既に売れている製品

まずは今のマーケティング活動の方向性そのままで強化した場合、伸び代がどの程度あるのかを把握します。
既存路線でまだやりきれていない、伸び代があるようであれば、「このままやりきる」という判断になるでしょう。

もし既にうまくいっており、ターゲットへのリーチが飽和している場合は、新たな成長戦略を描く必要があります。その際は、売れているパターンをWebで再現していく方向性、及び売れる可能性があるがまだリーチできていない層へリーチを伸ばしていく方向性などが考えられます。

状況によっては競合対策の比重が多くなるケースもありますが、基本はユーザと自社の強み(当然ながら営業力含む)を中心に考えることをお勧めします。

それに対する戦術の選択肢としては、下記等があります。

  • 既存のWebサイト内での強化
  • 特設ページ群の新設
  • 別ドメインでの専用のWebサイトを用意
  • 外部メディア活用や広告利用

ただし、飽和している場合で起きがちなこととして、「リードの質の低下・営業効率の低下」があります。
その場合、Webサイトのリニューアルなどの大鉈を振るう前に、できることがあるかもしれません。

まだあまり売れていない製品

そもそも売り方が明確にわかっていないケースがあります。

たまに売れるが、売れている理由がバラバラで再現性がない。
リードは取れているが具体的な商談に進まない、そもそもこの日本市場でニーズがあるのかもわからない。
そもそもリードも取れない。

そのようなケースでは、戦略を立てるにも深い現状把握が必要です。

まず売れない理由の分析から始めます。

単にターゲットと接点を持てていないだけなのか、それともそもそもニーズが無いのか、あっても訴求点がずれているのか、ターゲットを変えれば売れる可能性はあるのか、等。Webと営業の両面から分析してきます。

営業に関しては過去の商談の内容、特に失注・商談が進まなかったケースの分析、ターゲット顧客のニーズ及び課題に対する痛みの強弱、直接競合/間接競合、そして実ターゲットとなり得る方へご協力をいただきインタビューを行ない本音ではどうなのかを把握すると突破口が見える場合があります。

オーソドックスにファネルの流入口を拡大していくのか、訴求点や狙うシーンを変えるのか、ターゲットを変えるのか、市場を細分化し勝てるセグメントの一点突破を狙うのか、それともユーザに明確な買う理由が乏しければ、コマーシャルインサイト(お客様にとって既存の概念を揺るがす衝撃的な事実であり、自社だけが提供できるその売り物がどうしても必要な理由)を生み出せないか検討するのか。

どこに勝ち筋があるかを考えた上で、Webをどう活用するかを定めていきます。

特に内容が専門的な分野においては、様々なところで売れない理由が生じます。
まずは集客の構造上、どこがボトルネックなのかというWeb側の分析を行い、営業ヒアリングと併せて実際に何が起こっているのかを推測していくところから始めることをお勧めいたします。

弊社では無料相談会を提供しておりますので、その無料相談の範囲でそれらは十分対応可能です。

子会社を多数有する大企業の全社Web戦略

ここからは、また別軸のお話です。

本社ブランド名を企業名に含む冠会社を多数持つ大手企業のグループ本社では、個別最適化と全体最適化、ブランド管理とWebガバナンスに悩みます。

どこまで縛りを設け、どこまで自由にさせるか。
特に、ブランド変更時のような大きな変動がある際に見直しが行なわれます。

また、世界中に現地法人を持つ大規模なグローバル企業であれば、現地法人のWebガバナンス・各国の法制度や文化的背景に基づくリスクマネジメントやマーケティング指針・ブランドマネジメント・共通Webマネジメント基盤などがテーマとして上がります。

縛られる側、縛る側、両方の支援を経験していますが、本当にこのバランスは難しいものです。

これらの領域になると「Web」が主体の検討になります。

グループ全社として、Webはどうあるべきか?その戦略から具体に落とし込む工程では下記のようなことが行なわれます。

ブランドガイドライン、Webサイト制作ガイドライン、Webアクセシビリティ基準、共通CMS基盤指針、セキュリティガイドラインなどのガイドライン系整備に加え、ガイドライン遵守のチェック体制と仕組み、現行基盤からの移行計画、子会社毎に必要な作業負担、主要子会社の事業におけるWeb戦略・競合企業との比較やトレンドを加味したWebマーケティングを実行可能な共通基盤の整備、ツール導入のニーズや現場の運用体制についての考え方。

行なうことは山盛りで、プロジェクト専任張り付きで人手を掛け、中長期の取り組みが必要です。
弊社ではそれを請けてしまうと既存のお客様の対応ができなくなりますので、現在の体制ではお請けできません。部分的なお手伝いは可能です。(子会社数100を越える大企業を想定したお話です。数社規模であれば問題ありません。)

政府機関や非営利法人のWeb戦略

例えば省庁・独立行政法人・財団法人など、一般企業ではない団体のWeb戦略についてです。

弊社ではこれまで中央省庁や日本最大級の財団法人様などのWeb戦略をお手伝いして参りました。
その際の考え方について解説します。

省庁・独立行政法人など

これらはその存在自体に設置の目的・根拠となった法律が存在します。
そこには明確に役割が記されており、時代による変遷はありつつも、核となる存在意義や行動指針はその設置法に基づいています。

であれば、根幹的なWeb戦略としては、その設置法が示す根幹の役割を果たすために設定される必要があると考えています。一般企業であればミッション・ビジョンの達成にあたるものと言えます。

また、時勢によって直近果たすべき役割というものも存在します。
直近の例を挙げると、コロナ禍においては有事における対応で優先度を変えて対応せざるを得ない状況であったかと思います。

それら時流・時勢も加味しながら、根幹の本質的な役割をどう達成していくのか、また関係各所からの要請・働きかけに対してどう応えていくのかを統合して意味のある実績を出していく必要があります。

財団法人や非営利団体など

こちらも基本的に一般企業とは異なり、根源的な特定の目的に対して達成・寄与することを考えてWeb戦略を立案する必要があります。

社会的意義のある活動として、置かれている状況や課題は様々です。
「何のためにWebを使うか」という根幹から考えることになります。

まとめ

Web戦略でいう「Web」とは、自社のWebサイトに限定されるものではなく、Web・インターネット上で展開するあらゆる活動を包括した概念です。

多くの企業が未だに「自社Webサイトの分析と競合比較」を起点に今後のWebサイトをどうするか考えようとします。それは必要なことではありますが、起点とするとしたらもっと根源的な存在意義・目的・置かれている背景や成し遂げたいことから始めることをお勧めしています。

Webサイトをどうするかというレベル感で戦略を考えようとしても、得られる価値は限定的です。

企業または事業全体像を取り巻く社会を、相互作用を持つひとつのシステムとして捉え、その中で何を為すことが全体最適として成立する勝ち筋となるのかを検討し、関係各者・部門に協調して動いてもらうことで付加価値は最大化します。

例えばマーケティングを変えるなら、営業現場の動きも変わるはずです。初回接触から顧客化、アップセルや再受注のストーリー、トークスクリプト、営業資料。既存顧客フォローの仕方、そのための役に立つ道具やマーケティング側にできる支援の活用・連動。

採用情報の出し方を変えるなら、採用現場の動きも変わるはずです。外部媒体への掲載情報との整合性・一貫したストーリーの体験体現、企業説明会や書類選考参加者の期待値、知りたいこと、意欲喚起のストーリー、採用担当者や採用活動に巻き込む社員の振るまい、選考基準、最終選考や内定承諾の体験。最終選考が役員面接なら、参加する役員にも趣旨やスタンスに理解をもらい協調して振る舞いを揃えてもらう必要もあるでしょう。

このようにWeb戦略の話をしてきましたが、弊社ではWeb戦略はWebの外を見た上でWebと統合して考えます。Webはあくまで目的を達成するための道具です。であれば、その目的を明確化し、しっかりと繋げてあげることで意味のあるWeb戦略になり得ると考えています。

もちろん、他の意見も色々あるかもしれません。Webサイトのつくりかた一つとっても戦略ですよ、と。
弊社はそれを否定はしません。重要であると認識しています。ただ、弊社が戦略として話す際のはじまりの粒度は「あなたの『会社』『部門』『この製品』はなぜ存在しているのですか?」という問いからだというお話でした。

この記事の執筆者

コンサルタント 上田

東証一部上場の専門商社にて営業職に就き、ルート営業、新規開拓営業、展示会営業等を経験した後、Web制作とWebシステム開発の会社を創業。その後2008年に再度独立し、大手メーカーのグループ全社Webコンサルティングや、グローバル企業のWeb改善プロジェクト、中堅・中小企業のWebコンサルティング等に従事し、2011年に当社法人化。代表コンサルタントとして現在も前線で業務に従事しながら、経営・社員のマネジメント・育成・事業開発に勤しんでいます。コロナ禍でお腹周りが10cm増えました。

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