2019.11.13
単一のWebマーケティング手法にこだわることはリスクしかない
Webマーケティングというと「リスティング広告をやりましょう」「SEOをやりましょう」とか、「SNSを活用しましょう」「コンテンツマーケティングをやりましょう」さらには「MAツールを導入しましょう」等、手法・戦術ばかりがフォーカスされているように常日頃から感じます。
それはキャッチーで、実際に時代の流れに沿ったもののため、魅力的かつ納得感があります。
しかし、取れる打ち手が「固定化された手法の一本槍」では、果たしてこれから起こる事象に対応出来るのか疑問に思います。
もし社内Webコンサルタント的な、全体をハンドリングできる方が存在するのであれば良いと思いますが、なかなかそのような人は少ないのが現実と思います(より上位層のマーケティングを見られるマーケティングマネージャー様は良くお見かけしますが、ビジネスとWeb現場の繋ぎが不足しているため、私のような仕事のニーズがあるようです)。
やってみて、出た結果が想定と違ったとき、別の手を打てないと辛い
状況を見つめると、「違う手法を用いるのが正しいのでは」と思うケースがあります。
下記状況であれば、あなたならどう手を打つでしょう?
尚、実話を元にしたフィクションですが、肝の部分は変えていません。
Case1.リスティング広告+ランディングページでの失敗
ダメだとわかったのにも関わらず、
数ヶ月の契約縛りで身動きが取れなかったクライアント
検索ボリュームが大きいので十分市場があるだろうと考え、リスティング広告を出してLPで捕まえる集客手法を展開。LP+広告をセットにした専門業者と数ヶ月の縛りで契約。
しかし、実際にやってみたところ、広告予算が一瞬で消化されるが、反響が無い。
どうやらそのワードで検索するユーザの多くは購入するユーザではなく、情報を求めているユーザであるということに気付いた。
しかし、そのキーワード以外は検索ボリュームが小さく、当初設定した目標の顧客獲得数にはとても及ばない上、他のキーワード毎に最適化対応するためのランディングページの制作コストが、小さすぎる検索市場規模に対して見合わない。
私なら、初月でリスティング広告を止めて、SEOでリーチを狙います。
ターゲット外ユーザにクリックされて予算消化することが問題であれば、いくら関係ないアクセスがあっても消化されないオーガニック検索からの集客が有効と考えるからです。
同時に、今のLPをできる限り素材として活かしつつ、ニーズがあるユーザが検索しそうな末端ワードを狙い、小規模テストをします。
そのテストでは実際に問い合わせまで至らなかったとしても、ヒートマップを用いてスクロール量を測定したり、フォームへの到達率を測定したり、反応したエリアがどこであったかを観測し、ユーザに対する理解を深め、可能性の大小について見極めます。
既にコンサルティングを契約しているのであれば、これに掛かる追加の実費は広告含め数万円程度でしょう。
また、取り扱い商品/サービスに寄りますが、もしターゲットが一般的な人たちであれば、アンケート調査や安価なオンラインユーザテストの活用も有効でしょう。これも数万円程度から実施可能です。
それにより、次の打ち手が見えてきます。恐らくリスティング広告+ランディングページという単一手法にこだわっていては、状況は打破することは出来ないでしょう。
では、下記のケースでは、あなたならどうしますか?
Case2.コンテンツマーケティングでの失敗
結果が出ない方向に2年間走り続けたクライアント
「コンテンツを大量投下すれば勝てる」という考えから、コンテンツマーケティングを開始。
競合サイトのコンテンツ数が200件あったため、それを上回る300件のブログ記事コンテンツを量産することに。当然その数の制作を行うにはかなりのコストが掛かってしまうため、記事コンテンツ量産専門の単価の安い事業者に依頼。確かに安く・早くでき、さらに文章の体裁としての品質も許容出来るレベルは維持してくれている。
しかし、どれだけ記事をリリースしても、全然申し込みが増えない。
アクセスは確かに増えている。ワードによっては1位になっている記事も多くある。しかし、申し込みに至らない。
コンテンツマーケティング事業者からは「育成に時間が掛かるので、継続的な接点を持つよう継続的なコンテンツ発信が必要」と言われ、2年続けているが申し込みが増えた実感が無い。
私なら、一旦立ち止まって考えます。記事追加をストップし、そこで浮いた費用でアクセス解析及びエキスパートレビュー(専門家の経験知によるWebサイト分析)の実施をお勧めします。
SEO集客が出来ていて、閲覧数も多いのに申し込みに至らないのであれば、下記のような可能性を疑ってユーザ行動の解析から始めます。
- 集客起点となる記事ページから、商品・サービスの紹介ページ、そして申し込みページまでの流れが断絶されていないか?
- 集客出来ているというキーワードは、即申し込みが期待出来るユーザが検索しそうなワードか?
→即申し込みが期待出来るワードで着地した記事ページの内容は、ユーザの検討段階とマッチしているか?申し込み率を最大化するための主導線にナビゲート出来ているか?
→確固たる申し込み意志が確認出来ない検索ワードで着地する記事ページの内容や関連記事の配置は、意欲を向上させたり疑問を解消させてユーザの検討段階を押し上げ、態度変容を促すストーリーを形成しているか?そのストーリーと商品/サービスの訴求ページが表す内容には一貫性があるか?
- そもそも記事系コンテンツを除いて、このWebサイトのコンバージョン率は十分高いか?
分析の結果、そもそもの問題が露呈
- 記事コンテンツと本体の商品/サービスの訴求ページの内容に繋がりが希薄
- そもそも記事を除いてコンバージョン率が低い
- スマートフォンユーザが多いのにスマートフォンでの表示時、関連記事やサービスページにアクセスしにくい実装
- 狙っているキーワードでコンバージョンが取れないことは自明なのに、当初の企画に執着している(間違いを認められないか、冷静な振り返りをしていない)
これら分析結果に基づいてチューニングを行うと、コンバージョンに至るアクセスが目立つようになりました。
しかし、そこまで掛けた量産コストと2年という時間に対して、十分な価値産出が出来ているかというと、疑問です。
この失敗を生んだ原因は、皆が「引き返せない・走り切るしか無い」状況に追い込まれたことだと思います。
Web事業者が「自分で提案した内容の正しさを自分で疑い否定し、かつ方向転換についてクライアントを納得させる」ことが早期にできれば、違う打ち手も取れるはずです。結果、クライアントが被るダメージも最小限に抑えられ、途中いくらかのロスはあったとしても、最終的に大きな利益をもたらせるはずです。
しかしそれは自己否定になる訳で、誰もが避けたいことだと思います。
「提案されて言うとおりに支払ったのに、やってみてダメでしたって何なの?」と言われるリスクを避けたい訳で、自己防衛に走りたくなる気持ちもわかります。
しかし、実施してみないとわからないことというのは世の中に多くあります。
少なくとも経営やビジネスの現場で答えの無い問題に立ち向かってきた方々であればわかるはずです。絶対というものはあり得ないのだと。
検証の結果、仮説が間違いであると気付いたとき、どうしたら共に前を向けるのか?
誤りを認め方向転換を提案するためには、3つの要素が必要
「勇気」
「顧客との信頼関係」
そして何より
「打ち手の選択肢の豊富さ」
これが無ければ、目の前の問題に即した提案は不可能なはずです。
「先月言ってたことと違うじゃないですか!」となっても怒らないでください。
様々な現場の経験から、うまく行っていないことは早くきちんと伝えることが大切なのだと骨身に染みています。
方向が違うのであればできる限り早く転換すべきです。その小さなピボットの繰り返しが精度を高めていき、大きな成果に繋がります。
どちらのコンサルタントと仕事をしたいですか?
A.全てにおいて自信満々で、上手くいっていないことを認めず誤魔化すコンサルタント
B.「このままではダメです、得られた情報を足場に新たな仮説が考えられるのですが、予算も限られているので小さく試してみませんか?」のように話すコンサルタント
(もちろん大事な予算を預かりながらも、ストレートに導けなかった重さを感じながら、どうしたら本当の意味で役に立てるか絞り出しての発言であることが重要です。何の反省も無いのは論外です。)
和食を欲しているのにマクドナルドしかない町では、町民は皆、てりやきマックバーガーを食べるしか無いのです。
単独の概念を導入する際には「試してダメならしょうがないと割り切れる余裕があるとき」を除き、広い視野と打ち手を持った存在が必要と思います。
この記事のメイン制作者
東証一部上場の専門商社にて営業職に就き、ルート営業、新規開拓営業、展示会営業等を経験した後、Web制作とWebシステム開発の会社を創業。その後再度独立しフリーランスとして大手メーカーのグループ全社Webコンサルティングや、グローバル企業のWeb改善プロジェクト、中小企業のWebコンサルティング等に従事し、2011年に当社設立。代表コンサルタントとして現在も前線で業務に従事しながら、経営・社員のマネジメント・育成・事業開発に勤しんでいます。最近ダイエット中で、お腹回りが10cm縮みました。