2019.10.16
Webマーケティング担当者になったら最初にすべきこと
もしも、あなたがWebマーケティングの担当者になったら、まずは何から始めますか?
広告を打ち出しますか、SEOを改善しますか。思い切って、Webサイトをリニューアルしますか。
あるいは「Webマーケティングとは」で検索して理解を深めるところから始めるでしょうか。
具体的な施策を実行すること、Webマーケティングに関して理解を深めること、どちらも不正解ではありません。
しかし「最初に何をするべきか」というと、やることは次の2つです。
最初にすべきこと
- 目標設定
- 現状分析
何故、この2つが、施策の実行や知識の習得よりも大切なのでしょうか?
今回は、Webマーケティングを始める際にするべき、2つのこと──現状分析と目標設定について、
- 「何故、これらが大切なのか」をお伝えする【解説編】
- 「具体的には何をすればいいのか」を解説する【実践編】
【解説】と【実践】の、2つに分けてお話しいたします。
それでは【解説編】へと参りましょう。
【解説編】何故、目標設定と現状分析が大切か?
失敗は「目的」が見えていないことで起こる
そもそもの話ですが、Webマーケティングは何のために行うのでしょう。
「知らないよ。会社がやれというんだもの」
もしも私が、突然マーケティング担当者に任命されたら、迷わずこう答えます。
(私もWebマーケティングに携わる一人ですが、かつては、このように感じていました。汗)
かつての私のように、担当者が「目的」を理解していないケースだと「何もわからないから、とりあえず、わかるところから手をつけてみよう」という失敗に陥りがちです。
「それっぽい活動を初めてみたものの、結果が出ない、次に何をしていいかわからない」という事態は「何故、Webマーケティングをするのか」という「目的」が見えていないことで起こります。
では、Webマーケティングの目的は何かというと「利益を上げること」に他なりません。
Webマーケティングで結果を出すために
Webマーケティングは、通常の営業活動と同様「利益を上げるため」に行われます。
そして利益を上げるという目的に対し「どのぐらい利益を上げるか」という目標が設定されます。
- 企業は利益を上げるために、Webマーケティングを行なっている。
- 「利益を上げる」とは言うが、具体的に、どの数値を、どのぐらい上あげればいいかは擦り合わせが必要。
この当たり前のようでいて、忘れられがちなことが分かると「もしかして目標も定めずにWebマーケティングを行なっていた自分はとんでもない愚か者だったのではないか?」と理解できます。
それもそのはずで「結果を出せ」と言われているにもかかわらず「どのような結果を出せば評価されるか」という「目標」がわからないまま走り出していたのです。
Webマーケティングで結果を出すためには、どこに辿り着けばいいかというゴール、つまり「目標の設定」が欠かせません。
まずは「ギャップ」を知ろう!
さて、当たり前のことですが、目標があるということは「現時点では目標に届いていない」という現実があります。
例えば、ある商品を売りたいという場合。
当該商品における現在の売上高が年間「5,000万円」で、目標が「2億円」だとします。
つまり、目標を達成するためには、利益を現状の4倍伸ばさなければなりません。
そして、現状と目標のギャップを埋めるための活動がWebマーケティングと営業なのです。
利益を上げるために何をするか
利益を上げるために何をするか。
これは至ってシンプルで「Webマーケティングから営業へと見込み客を渡し、営業が商談を成立させる」これに尽きます。
Webを正しく活用することで、多くの見込み客(これから顧客となる可能性のある人々)をサイトに集めることができます。
そして、見込み客からの「問い合わせ」が発生したら、営業の出番です。
Webから問い合わせのあった顧客にアプローチし、契約・販売へとつなげていきます。
目標 − 現実 = ギャップ
どうやって利益を上げていけばいいか、つまり目標を達成するための手段は見えてきました。
しかし「どのぐらいギャップがあるのか」は分かりません。
言い換えるなら「現状と目標に、どのぐらい開きがあるのか?(目標と現実の差)」を認識しないことには、正しい戦略は立てられません。
「目標と現実の差」は「目標 − 現実 = 目標と現実の差(ギャップ)」で割り出すことができます。
スタートとゴールが明確になって初めて、ゴールへ向けた最短距離が見えてきます。
まずは、スタート(=自分たちの「現状」)を認識することが大切です。
そのために、まず、設定された目標から逆算し「現状はどうなのか?」を分析する必要があります。
【解説編】まとめ
目標と現実にはギャップがある。
このギャップを埋め、目標へと近づく(=利益を上げる)ために、マーケティング活動は行われる。
まずは、事業の売上目標と現実の売上がどのぐらい離れているかを、見つめ直す必要がある。
そのために、Webマーケティングでは「目標設定」と「現状認識」が大切になる。
【実践編】具体的に何をすればいいか?
「目標設定」と「現状認識」とは、具体的に何をするのでしょう?
ここで鍵となるのは「数値」です。
目標と現実のギャップを知るということは「具体的な数値の開きを知る」ということです。
自分が今、何点獲得できるかを知らないことには、弱点はおろか、強みさえ見えてきません。
「ギャップを具体化する」というのは、目標と現実の「数値の差」を見るということなのです。
見るべき数値は?
ギャップを把握するためには「数値」を見る必要がありますが、目標設定に必要な指標は何かを知らなければなりません。
とはいえ、マーケティング関連した指標は数多く存在し、どれが目標の達成に関わる数値なのかというのは見えづらいことと思います。
迷ったら、目的に返りましょう。
Webマーケティングは「利益を上げる」ための活動です。
そのため「利益とつながる数値」を見れば「目標設定」と「現状認識」が可能になります。
それでは、利益が出るまでの流れを思い出してみましょう。
利益が出るまでの流れ
- 集客
- 問い合わせ
- 商談
- 契約・販売
これらのフェーズを見るための指標がこちらです。
- 集客:Webサイト有効訪問者数
- 問い合わせ:問い合わせ数
- 契約・販売:受注数
場合によっては「商談成功率」もありますが、基本的にはこの3つの数値を見ると良いでしょう。
Webサイト有効訪問者数
Webマーケティングと営業が連携するフェーズでは、Webのゴールが「問い合わせ」の発生になります。
より多く「問い合わせ」してもらうには「問い合わせしてくれる人」を集めなければなりません。
それを見るための指標が「Webサイト有効訪問者数」です。
これは「Webサイトにどのぐらいの人を集められているか」を表します。
どれほど「見込み客(今後顧客になる可能性のある人々)を集客できているか」を知るためには「Webサイト有効訪問者数」を見ると良いでしょう。
一般的なWeb解析ツールとして「Googleアナリティクス」を使用します。
WebサイトにGoogleアナリティクスを導入することで、どのページがどのぐらい見られているか(ページビュー数)や、1ページあたり、どのぐらい読まれているか(平均滞在時間)など、様々な数値を見ることができます。
今回の「Webサイト有効訪問者数」を見る場合、その中でも「ユーザ数」を見ると良いでしょう。
サイドメニューの「オーディエンス>概要」をクリックすると表示できます。
問い合わせ数
見込み客を集めたのは、問い合わせてもらうためです。
「問い合わせ」が発生しないことには、営業マンも商談に進むことができません。
そのため現状分析では「Webサイトから、どのぐらいの問い合わせがきているのか」を明確にしましょう。
受注数
ここに関しては、Webマーケティングというよりは営業部門の専門領域です。
Webから問い合わせがあった企業へ、営業マンがアプローチします。
そのうち「何件受注へと至ったか」を表す指標です。
他の2つ(Webサイト有効訪問者数、問い合わせ数)の指標に比べ、こちらは利益に直結する指標となります。
「現状分析」の場合、この3つの指標を見る
- Webサイト有効訪問者数
- 問い合わせ数
- 受注数
仮目標の設定
さて、いよいよ3つの指標を使って「現状分析」と「目標設定」を行ってみましょう。
今回は、具体例として、次のようなケースを考えてみます。
売上高 現状と目標
- 【現状】 5,000万円
- 【目標】2億円
商品の売上を、現状の「 5,000万円」から「2億円」へと伸ばしたいというケースです。
売上が 5,000万円の現在、それぞれの指標は次の状態です。
Webサイト現状
- Webサイト有効訪問者数:900人
- 問い合わせ数:30件
- 受注数:10件
今回の例では「1ヶ月あたりのデータ」という想定で話を進めていきます。
こちらのWebサイトでは、ひと月で、Webサイトに900人訪れ、うち30件が問い合わせへとつながりました。
30件のうち、実際に受注したのは10件しました。
諸々の要素を排除し、シンプルに考えると、売上高が「4倍(
5,000万円→2億円)」になることで目標を達成できます。
よって、Webの数値も「現状の値」を「4倍」し、仮目標として設定します。
目標が4倍ですので、各指標も目標と比例させる形で4倍してみると、このようになります。
Webサイト仮目標
- 訪問者数: 3,600人
- 問い合わせ件数:120件
- 受注数:40件
単純な発想ではありますが、売上高を現状の4倍にしたいという場合、受注数も現状の4倍である「40件」必要と言えます。
ですので、こちらの数値を、仮の目標を設定します。
目標とする数値は達成可能か?
「それぞれの数値をどれくらい伸ばせばいいか」は比例関係で割り出せます。
しかし、これを目標として設定してしまうのは早計です。
次に「目標とした数値が現実的なのか?」を検討しなければなりません。
まずは「Web集客」における指標「Webサイト有効訪問者数」について、具体的なところを見てみましょう。
先ほど現状「900人」を4倍し、仮目標を「 3,600人」と設定しましたが、果たしてこの数値は現実的なのでしょうか?
この
3,600人というのは「1ヶ月でWebサイトに
3,600人集める」ことを意味します。
つまり、Webにおいて「
3,600人を集められるだけの市場ボリュームがあるのか」を見なければなりません。
「Webで人を集める」といった場合、まずは「検索エンジンからの流入」が考えられます。
そもそも狙っているワードで、
3,600回以上検索されていないと、
3,600人をWebサイトに集めることは不可能です。
1ヶ月あたりの検索ボリュームを見て、目標値を現実的なものに調整していきましょう。
検索ボリュームを見たい場合は「Google広告」を使いましょう。
Googleアドワーズには「キーワードプランナー」という昨日があります。
キーワードプランナーを使うことによって「どの検索ワードが、1ヶ月あたりどのぐらい検索されているか」を見ることができます。
例えば「Webマーケティング」の場合、月間8,100回検索されていることがわかります。
このように、検索市場ボリュームの観点から見て「ニーズのある層は、目標となる訪問数を賄えるだけ存在するか」見てみると良いでしょう。
「検索ボリューム」が小さい場合はどうするべきか?
検索ボリュームが小さいということは、狙っているワードでの集客は見込めない=仮目標に到達できないということになります。
この場合の対応としては、
- 意欲レベルは下がるが別チャネルからの流入を狙う
- ボリュームを大きくするという施策を行う
という、検索ボリュームそのものを改善していく方向と、問い合わせ数を上げるという方向があります。
検索ボリュームがそのままでも「問い合わせされる割合をあげる」ことで、結果的に「受注数」が伸びることが予想できるからです。
利益に直結する数値である「受注数」を増やすために、Webにできることは、
- Webサイトにより多くの人を集める(Webサイト有効訪問者数を伸ばす)
- より高い確率で「問い合わせ」してもらうように工夫する(問い合わせ件数の増加)
この2つです。
Webマーケティングにおいて現実的な目標設定を行う場合「この2つの指標をどれだけ伸ばせるか」を見極めていく必要があります。
【実践編】まとめ
- 目標値を現状から割り出す。
- 目標となる売上と比例されるように、3つの指標を倍数にして、仮目標として設定する。
- 仮目標が実現可能かどうか、検索ボリューム等を見ながら調整していく。
目標値を「現状から割り出し、全体のバランスを見て、微調整を進めていく」という手法が有効なのは、Webにおいて、数字の多い・少ないという判断が事業種別・性質によって異なるからです。
例えば、市場に存在する全ての競合に一通り問い合せるようなニッチな業界では、標準CVR(コンバージョン率=どれだけ問い合わせがあったかという割合)は10%を越える場合もあります。
逆に、競合が多い業界では1%を割っていることもしばしば。
このように数値を見ただけでは、一概に「多い・少ない」という判断はできません。
そのため、目標値はそれぞれの事業に合わせてカスタマイズしていく必要があります。
どの数値が、どれだけ伸びる余地があるかを把握して、事業上の目標を達成できるような判断をしていきましょう。
営業サイドとのすり合わせも重要
現実的な目標を設定するためには、ともに協力していくパートナーである営業部門と連携が欠かせません。
営業サイドとしては「問い合わせ数が多い方が嬉しい」のか「問い合わせの数が少なくとも、受注確度が高いものに絞って欲しい」のか、擦り合せが必要です。
それによって、Webマーケティングで行うべき施策も変わってきます。
最後に
今回は、目標設定と現状認識の重要性と、実践方法をお伝えしてきました。
上述の通り、Webマーケティングは、Web単体で完結するものではありません。
後続である営業部門に配慮しつつ、Webでできる限りのことを行っていく必要があります。
目標設定と現状認識は、Webマーケティングの第一歩です。
目標値を設定するための市場調査も、今後のマーケティング活動の糧となります。
ビジネス全体を俯瞰した現状認識と目標設定によって、事業の強み・弱みをあぶり出し、目標達成へ近づくような施策を打ち出すことで、最小の労力で最大の効果を上げるマーケティングを実現できます。
この記事のメイン制作者
東証一部上場の専門商社にて営業職に就き、ルート営業、新規開拓営業、展示会営業等を経験した後、Web制作とWebシステム開発の会社を創業。その後再度独立しフリーランスとして大手メーカーのグループ全社Webコンサルティングや、グローバル企業のWeb改善プロジェクト、中小企業のWebコンサルティング等に従事し、2011年に当社設立。代表コンサルタントとして現在も前線で業務に従事しながら、経営・社員のマネジメント・育成・事業開発に勤しんでいます。最近ダイエット中で、お腹回りが10cm縮みました。